地域金融機関の取組みに関する記事です…

2022年6月4日(土)

地方経済の縮小均衡、低金利環境と従来の銀行業では生き残りが厳しい地域金融機関は、金利以外の収益源を見いだすべく農業や地域商社への参入を進めているという記事です。

地銀、アボカド栽培やコラボ商品 金利以外の収益源探る: 日本経済新聞 (nikkei.com)

2021年の銀行法改正により、銀行の創意工夫次第で幅広い業務を営むことが可能となっており、様々取組みが出てきていますが、グループ収益の柱となるまでには、まだまだという状況でしょうか。
特に、農業に力を入れる銀行も多くなっていますが、日本の農業経営体の大半は個人事業がベースとなっており、地域銀行が取引している実績は殆どなく、大半の個人事業体はJAグループによる購買事業・信用事業・共済事業による取引により経営しているのが実情です。
一方で、農業の個人経営主の平均年齢は67歳を超えているといわれ「高齢化と後継者不足」が全国的な問題になっています。5年おきに公表される農業統計では、個人の経営体が減少する一方で法人化された経営体が増加傾向にはありますが、全体数に占める割合はまだ一桁%の状況です。

このような環境を踏まえ、地域金融機関も地域における課題可決の一環として「農業関連」の事業へ参入するのでしょうが、JAグループによる事業内容とネットワークに勝る「生産から物流・販売まで総合的に体系化」したビジネスモデルを確立するには、地域銀行単体による対応では限界があるのではないでしょうか。農業に関わらず、地域における主要産業の経営主も高齢化と後継者不足という問題をか抱えている点を考えれば、単一事業ではなく、サプライチェーン全体に係る事業を関連付けたビジネスプランを確立し、同時に、全国の地域金融機関が総合的に連携する体制を整備することが重要ではないかと思います。

システム共同化を超えた、地銀どおしの連携も増えてはいますが、具体的に成果が出ている例はまだまだという状況下、地銀の生き残りを考えた場合、銀行法改正による業務範囲の規制緩和は、新たな事業転換を検討する上ではプラスの材料ではありますが、地域NO1の地位を前提としたこれまでの発想による対応では、効果のある改革を進めるのは難しいのではないかとも思います。
一方で、SBIホールディングが新生銀行の株主となり、傘下の第二地銀との連携を加味したビジネス展開を検討すると公表していますが、異業種からの参入等も含め新たな動きへ対抗する対策も検討する必要もあるではないでしょうか。

コロナ感染者は減少傾向にあり、GOTOトラベルも再開するとの見込みもあり、経済活動もようやく動き出す環境になりつつありますが、低金利政策の反動による円安、それにともなう物価の高騰により個人消費は停滞するのではないかとの見方もあります。低迷する経済が活性化するにはまだまだ時間がかかりそうであり、銀行経営が好転するという材料が乏しい中、不良債権の顕在化が経営の足元をすくう可能性も念頭に置く必要がありそうです。

 

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