事業性融資推進法が成立しました…

2024年6月8日(土)

企業が持つ技術力や成長性など企業価値を担保に設定して融資する「企業価値担保権」を盛り込んだ事業性融資推進法が参院本会議で可決、成立したという記事です。担保の登記システムの整備や適切な利用を支援する機関の設立などを進め、事業者と金融機関が利用しやすい環境を整え、2年半以内に施行されるようです。

企業価値を担保に融資、成長融資促す新法が成立 - 日本経済新聞 (nikkei.com)

本件は、昨年の1月に金融審議会(首相の諮問機関)が新制度案として示していたのですが、1年遅れで法案が成立したことになります。2023年1月25日のブログでも記載しましたが(本田伸孝のつぶやき (hfmc-honda.com) 、これまでの融資慣行である「不動産担保や信用保証」による保全措置から、契約通り債務履行できるか=事業を継続・維持・発展させることは可能なのか、事業性の評価ノウハウが重要な要素になるものと思われます。

ここ数年、金融機関は「担保や保証に過度に依存しない、事業性評価に基づく融資」の励行を指導されてきましたが、なかなか、改善できていないという現況を考えれば、本制度が普及するか否かは、やはり、運用側である金融機関の体制面の整備次第ではないでしょうか。
審査の入口段階で、担保の対価となる事業価値の評価の算定根拠を「利用者である事業会社」に正しく説明できるようにすることも必要になるのでしょうし、プロジェクトファイナンス等で利用される「コベナンツ条項」の取り扱いなども重要に要素になりそうですが、具体化して浸透させるには相応の期間が必要でしょう。

一方、昨日、金融庁からは「コロナ資金繰り支援策の転換を踏まえた事業者支援の徹底」するように要請文を発しています。PDF版
コロナセーフティネット保証4号やコロナ借換保証は6月末の期限を以て原則終了、日本政策金融公庫等の新型コロナウイルス感染症特別貸付等の金利引き下げについても終了する等、各種資金繰り支援策についてはコロナ前の水準に戻して、経営改善・再生支援に重点を置いた資金繰り支援にすることを目指すようです。
また、事業再生を支援する上で、税金や社会保険料の支払いがネックになるケースもあることから、「事業再生情報ネットワーク」なるものも創設し、関係者が情報共有することで、支援策の策定をスムーズに行う事を目的にしているようです。

経営改善・再生支援と言われてもう何年にもなるでしょうか。おそらく、2009年の金融円滑化法施行後から、時々の情勢を考慮しながら方法を見直しながら進められてきましたが、「事業活動からどれくらいのキャッシュを生み出すことができるのか=返済原資を正しく見極める」という根本部分の考え方は、今回の「事業性融資推進法」の基本的考え方に変わりないように思います。
事業実態を正しく評価することが大前提になるかとは思いますが、決算数値だけでない様々な経営資源の要素を「評価」する基準を標準化するこができるか否かが重要になるはずです。
しかし、この考え方を一部企業だけではなく、取引先企業全てに適用するとなると、金融機関側の体制面や運用面ではまだまだ実現できていないのが現状でしょう。

 

Copyright 2023 HFMConsulting.Inc ,All Rights Reserved