現状の事業実態を捉える検討ポイント(SWOT分析)

 会社の経営を維持し発展させるためには、自社を取巻く様々な環境要素を正しく評価する必要があると説明しましたが、どのような観点からとらえるべきか、詳細に解説します。

 環境要因といっても、自社が事業活動を行う上で直接関係する要素=内部環境要因もあれば、自社を取巻く外的な要素=外部環境要因もあります。
 これらの内部と外部の環境要因を
強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」に分類して、下記のように「4象限のマトリクスに要因を体系化」し戦略策定の基礎とするものがSWOT分析の考え方です。
強み(S)と機会(O)から「攻めの戦略」を考え、弱み(W)と脅威(T)から「守りの改革」を考えるのですが、会社の経営戦略を立案する上では重要な手法です。

             

 其々の要因の捉え方をまとめると次のとおりとなります。

■内部環境要因とは、
 会社が持っている「人・物・金・情報=【経営者資質、経営管理機能、商品・サービスの品質や技術力、営業力、収益力、財務体質、組織構造や人材スキル】」という経営資源そのものです。

「強み」要因の捉え方に関しては、事業活動をする際の経営機能が競合他社より競争優位性のある要因として捉え、事業上の活動に好影響を与え、収益向上や市場シェア拡大に直結する要因として選定するものです。ある意味、同業他社に対し競争優位にある自社の中核的実力=コアコンピタンスを要因として捉えるものです。

「弱み」要因の捉え方に関しては、競合他社より競争優位性のない要因として捉え、事業活動に悪影響を与え、収益低下や市場シェアの縮小を招く可能性があるのか否かを見極める必要がある要因です。強み要因とまったく逆の要因として捉えられるものです。

■外部環境要因とは、
 マクロ的な要因=【政治や法律、経済情勢、社会や文化の環境、技術革新…等】とミクロ的な要因=【お客様の構造やニーズ、競合他社の動向、取引関係先の動向…等】に分類することができます。

「機会」要因の捉え方としては、事業活動において自社がコントロールできない外部環境要因の中で、今後、自社の事業活動に好影響を与える可能性がある要因として捉えるものです。事業上の活動に好影響を与える、すなわち収益向上や市場シェア拡大が見込める要因として「機会要因」と考えるものです。

「脅威」要因の捉え方としては、今後、売上・収益の可能性を損なう要因や事業活動に悪影響を与える要因として、機会要因とは逆の要因として捉えるものです。


 各種要因を其々の象限へ分類し、会社の現状を「見える化」することになりますが、それぞれの象限から、経営戦略を策定する際にどのように考えれば良いのか。簡単に纏めると以下のようになります。

  • 強みと機会の象限は、自社の強みを生かして、取り込むことができる事業機会は何かを導き出し、現在の事業を強化・拡大すれば良い分野として考える「事業拡大戦略」の基となる要素です。
  • 強みと脅威の象限は、自社の強みで回避できる脅威は何か。競合他社には脅威でも、自社の強みで事業機会にできるものはないかを導き出し、事業の転換を行うか、狭いセグメントに集中するかを考える「事業転換戦略」の基となる要素です。
  • 弱みと機会の象限は、自社の弱みで事業機会を取りこぼさないためには何が必要かを導き出し、将来に向けた新たなコアコンピタンスを作り上げる可能性があるのか否かを検討する「新規事業戦略」の基となる要素です。
  • 弱みと脅威の象限は、弱みと脅威の組み合わせで最悪の事態を招かないためには何が必要か。最も多くの困難を伴う分野でもあり、回避あるいは撤退を考えるべき「事業撤退戦略」の基となる要素です。

 SWOT分析は、会社の実態を把握し会社を成長させるための重要成功要因を導き出すことに利用されるケースが多いのですが、自社の問題点を洗出し改革すべき要因を明確にすると同時に経営者や社員の意識改革に活用されることもあります。特に、経営状態が悪化した状態を改善するために、「経営悪化」となった要因を明確にすること、つまり、改革すべきポイントを明らかにするために活用することもできるのです。

 

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