仕入方針=原価計画のまとめ方

 仕入方針を考える上での基本は何か。重要なポイントは「売上=販売計画」の源になる原材料や商品・サービスを如何にして「安く」「確実に」「効率的に」仕入れることが可能か否かを見極めることです。

 「仕入」といっても業種によって捉え方が異なります。小売・卸売業の場合は、保有している商品在庫の状態も考慮しながら、販売計画に基づき商品別の仕入計画を考えることが一般的ですが、製造業のように売上の源となる製品や商品を製造して販売する場合は、販売計画に基づき販売対象となる製品や商品の「生産計画」を前提とした原材料仕入れや外部発注等総合的に仕入計画を立案しなければなりません。また、建設業のように販売=受注計画に基づき資材の仕入れや下請け企業への発注等を考えなければならないケースもありますが、
業種を問わず「仕入(=生産を含む)」と「在庫」という関係を正確に把握できることが重要です。

 仕入計画(生産計画を含む)は
「販売計画」に基づき、ロスを極小化することを前提に具体的な計画=方針を立案することが重要となります。つまり、仕入原価を最小限に抑えるためには、販売計画同様に「誰から(=Who)、何を(=What)、何時(=When)、何処で(=Where)、どのような目的で(=Why)、どのような方法で(=How)、幾らで(=How much」仕入れるか、「5W2H」の観点から捉えることが重要です。販売すべき商品やサービス、生産すべき製品の原材料をどのように仕入れるのか、次のような観点から考えることがポイントとなりますが、仕入計画で重点的に抑えておくべき点は「1)仕入先」「2)商品サービス別」「3)タイミングの3項目です。

  1)Who=どのような取引先なのか? 優良な既存先、新規の取引先?
  2)What=商品やサービスの中身は? 取扱い商品別・サービス別? 既存品か新商品か?
  3)When=タイミングは? どの位の頻度で? 何時まで?
  4)How=取引方法は? 直接か代理店等を通してか? 電話FAX、インターネットで?
  5)How much=価格は? 正規価格で?特別価格で? 割引価格で?
  6)Where=場所は? 何処の事業所、店舗で? 国内・海外?
  7)Why=目的は? 既存商品やサービスの補充? 新製品やサービスの提供?


1)【仕入先を分類する=Who】
 会社としては、売上を計上することも重要ですが、最終的に利益を計上することが目的となります。販売計画における販売価格の決定に関しては、最終的な利益計画に基づく利益の見込と競合他社も含めた市場価格を前提に決定することとなりますが、売れる商品やサービスを「安く」「最適なタイミング」で「確実」に提供してくれる仕入先は誰で、優良な取引先をどれだけ多く抱えているかが前提となります。
 売上げや利益に貢献できる取引先なのか否か等、会社として仕入先を見極める一定の基準=「顧客セグメント基準」を定め、「優良な仕入先は誰なのか」「儲かる仕入先は誰なのか」を見極める基準に基づき仕入の実態がどのようになっているか検証することについては既に説明していますが、販売計画において、最重要とする売れ筋の商品やサービスが必要になった時、「欲しい時期」に「確実」に納めてくれる取引先が最も重要なのであり、単に「安く」納める取引先が重要とは限りません。販売機会を逸する=機会ロスを発生させないように柔軟に対応してくれる取引先なのか否かを見極めることがポイントです。
 その為には、過去の仕入実績を基に、売上の源となる商品やサービス・原材料を納めた取引先別に取引実績を「発注から納品までの期間」と「数量と単価」、「通常注文か臨時注文かの区別」を前提に検証し、仕入先選定の基準として活用することが考えられます。


2)【商品やサービスの中身は=What
 仕入れている商品やサービスの中で、会社の経営に一番貢献している商品やサービスを見極めるには、売上高との関係だけではなく、「販売計画」に基づく売れる商品は何か、利益が出ている商品は何か、在庫として売れ残ることはないか、更に、不良品や毀損等商品やサービス価値を劣化させる要因は無いかという観点も加味して考えることがポイントである点は説明しましたが、仕入計画を立てる上で重要となるのは、「商品やサービスの価値を劣化させる要因」の見極めです。
 商品やサービスの価値を劣化させる要因としては、不良品や毀損等商品サービスに問題があるか否かの他、効果的な仕入計画を立案する上では「在庫として滞留する期間」を考慮する必要があります。
 仕入計画は、売上原価を考える上で重要な要素です。一般的に年間の仕入・生産計画を立案する場合、「当期末の予想在庫(材料・仕掛量含む)+来期仕入・生産予定−期末時点の繰越在庫予定」を前提に売上原価としての計画値を算出することになりますが、(詳細は利益方針策定で説明します)仕入・生産した商品や製品の在庫がどのようになっているのか「棚卸方法」も加味しながら「販売計画」との関係を考え、最も効果がでるように仕入量・仕入額を考えなければなりません。
 ここで、ポイントとなるのは、販売対象となる商品がお客様に販売されるまでの「期間」を正確に把握できるか否かという点です。つまり、仕入先に商品を発注して納品されるまでの期間と在庫として滞留する期間を合わせた「総期間」がどの位になっているかです。
例えば、生産されてから消費されるまでの期間=消費期間が定められている商品の場合、注文してから納品されるまでに多くの期間を要すれば、消費期限=在庫として保有する期間は短くなり、最終的に販売する期間を十分に確保することができずに廃棄する結果となり、会社にとっては多大な損失を負うというケースも発生します。
 これは、重点的に販売するか否か「販売計画」の内容と、1)の仕入先の選別とも関係するのですが、商品サービスが販売されて売上に計上されるまでの期間=リードタイムを如何に短縮できるか、仕入計画を立案する上では重要な要素となるのです。


3)【仕入のタイミング=When】
 利益性の高い商品やサービスの重要な要素としては「回転期間が短い」ことにつきます。つまり、在庫として滞留する期間をどの位短くできるかが重要となるのですが、その為には「在庫の実態を常に正しく把握できる」ことがポイントで、販売計画に基づき必要最小限の最適な在庫量を確保できる仕組みを確立することです。
 売れ筋で利益性の高い優良な商品は常に確保しておく必要があります。販売実績と在庫量の関係から、仕入れる時期と量を事前に定めておくことが必要であり、仕入計画を考える上では、1)仕入先、2)商品サービスに次いで「仕入のタイミング」は重要な要素です。
詳細な仕入計画を立案するには、ABC分析等から「商品や製品の販売・生産計画を前提に商品別」に仕入れるタイミングを考える必要があります。製造業を例にすると、仕入部品毎に使用金額別に在庫量と発注する頻度を考えることになります。小売業の場合は、使用金額を販売数量や販売額、利益額に置き換えて考えることで、最もロスの少ない仕入を実現することが可能となります。

図表−3
図表−3

 以上のとおり、期初に1年間の販売計画に基づく仕入計画=原価計画を立てる上で必要なポイントを「誰から」「どのような商品サービス」を「どのタイミング」で仕入れるかを正しく把握することから説明しましたが、その他の要因「仕入価格」「仕入方法」「仕入場所」「仕入の目的」も重要であり、販売計画同様、単一の要素のみで情報を捉えるのではなく複数の要素を組み合わせながら検討する習慣をつけることが重要です。
 更に、商品サービス別の仕入計画を前提に、地域や営業所、更には営業担当者別等、コストを考える上では「仕入額」を計上するまでの「行程」=「仕入量×仕入頻度×仕入単価」を要因別に計画の実現可能性も見極めながら考えることも必要でしょう。 

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