生成AIを融資稟議書作成に適用するそうです

2025年05月19日(月)

三菱UFJグループは、生成AI(人工知能)を使って融資の稟議(りんぎ)書などを作成し、業務の大幅な効率化につなげることを目指すそうです。

三菱UFJ、生成AIで融資の稟議書 サカナAIと提携 - 日本経済新聞

一頃、定型化された業務活動を効率化すべく、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)により定型的で反復的な業務を自動化することが脚光を浴びていましたが、複雑で判断を要する業務(例外処理や非定型な対応)には適用が難しく、対象範囲が限られるのではないかと指摘されていましたが、今回の記事にあるように、企業への融資にあたり、可否判断と貸出条件、資金の使途や返済原資等を記した稟議書を作成するには、企業業績や財務状況、事業計画など個別判断をする必要もあり、AIが様々な情報を学習して文書を作る作業へ適用するのであれば、弱点を改善できる可能性はあると思われます。

また、記事にもありますが、三井住友フィナンシャルグループは、富士通と連携し、製造業や卸売業、小売業など幅広い業種を対象に、個別企業の在庫や売上高などのデータをAIで分析することで精度の高い予測データを作成し、営業活動に活用することを考えているようです。

これら2つの事例に共通するものは、使用するデータからパターンやルールを見つけ出し、新たなデータに当てはめる=予測に適用する技術であるマシンラーニングとテキスト・画像・音声・プログラムコードなど新しいコンテンツを生み出す技術である生成AIを組み合わせることにあると思われます。

現在の金融機関における、融資審査の基本は、①対象とする企業の業績と将来予測、②必用とされる資金使途と返済原資、③万が一のための保全措置(担保評価)、④融資を行う事による金融機関にとってのメリット(適用する金利を含む)を総合的に判断することであり、金融機関の中には、当該内容を信用リスクモデルとして体系化し運用しているケースもありますが、当該部分をマシーンラーニングの技術に取込み、判断した結果を生成AIにより文書化まで自動化するイメージになるのではないでしょうか。

そうなると、融資業務へ適用するとしても、まずは、ある程度定型化されている小口の事業者向け融資にて試行を重ねながら、効果を検証することになるものと思われ、業務活動が大幅に効率化され、想定される効果を導き出すまでには相応の時間を要する可能性はあるでしょう。
また、リスクモデルから導きだされる結果をAIが利用して、最終的な融資の可否まで判定するとなると、ガバナンスという観点から統制方法も考慮しなければなりません。
モデルと活用して得られた結果が正しいのか否か、判断根拠が正しかったのか否か、損失が発生した場合の責任の所在をどのように判定するのか等、AIを使用する上での管理体制を明確にしておくことが重要になるのではないでしょうか。

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