金融検査マニュアル廃止による影響に関する記事

2020年01月05日(日)

2020年を迎え、金融界でも変化が現れるのでしょうか。20年続いてきた「金融検査マニュアル」が廃止され、今年度からは新たな指針に基づき、各金融機関が独自判断により業務運営することが求められます。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53871640X21C19A2L41000/

金融検査マニュアルでは、貸出運営の在り方についての指導が主でした。金融仲介機能を担う金融業としては、マニュアル的な指針があったことから、ある意味どこの銀行も収益とリスクのバランスを意識した業務運営に注力、特色のあるビジネスモデルが現れなかったことも事実ですが、一方では、何も考えなくても大きな傷を負うことは無いという安心できる状況でもあったといえます。

監督官庁としては、政治・経済・文化等国内外の諸環境が大きく変革する中、従来型の経営では生き残ることは難しいと判断、ここ数年、金融機関へは経営の抜本的改革を進めるべく指導をしてきましたが、今回の金融検査マニュアル廃止は、金融仲介業務における最後の規制をとき解いたことになるのでしょう。
金融機関側の経営者とては、この変化をどのように考え、何をすべきなのか検討しなければなりませんが、本格的な検討はこれからというのが本音ではないでしょうか。
金融機関は、従来型の貸出業務運営の考え方では限界があることは明白であり、コンサルティング等に軸を置いた経営指導による企業取引へ注力すると言っていますが、果たして、実現可能性はあるのでしょうか…

一方で、金融機関を取り巻く環境変化により、店舗中心からネットへの転換が起こっているとの記事からもあるように、営業モデルに関しては根本から改革する必要もあるでしょう。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO54042200U0A100C2SHA000/

資金決済を中心とした業務だけではなく、資金調達という側面を考えても、資金を必要とする企業側にとっては、様々な資金調達手段やアドバイスを提供してくれるネット環境の場があることで、利便性は格段に向上する可能性があります。

新たな資金調達手段として脚光を浴びている、クラウドファンディング=CFも一つの例でしょう。
クラウドファンディングは権利の持ち方によって、「購入型」「寄付型」「投資型または株式型」「融資型」などのように分類できますが、「融資型」については「ソーシャルレンディング」と呼称されています。
矢野経済研究所(東京・中野)によると、国内のCFによる調達額は2018年度に2000億円を超え、4年間で10倍近く拡大していますが、このうち9割を占めるのが融資の形で資金を調達する「ソーシャルレンディング」とのことです。
日本では、購入型と寄付型は金融商品取引法の直接的な規制対象ではないことから、個人や団体・企業の参入障壁が低く、起案の数・調達金額ともに伸びているとされていましたが、一方で、ソーシャルレンディングに関しては「第二種金融商品取引業」と「貸金業」の資格を有する必要があり、資金募集の場を提供する運営母体はそれなりの信用が必要になり、ハードルが高いといわれていますが、規模は拡大傾向のようです。

投資家を欺く事例も散見され、投資家保護を考える必要はあるかと思いますが、ネットの機能を有効活用し、AIの技術を組み合わせることで、「人」以上のコンサルティングサービスに近い付加価値を提供できる環境が整備されれば、リアルの店舗と職員を主体としたサービスモデルでは対抗できなくなることも考えられます。
まだまだ、冬の時代が続く金融機関に生き残る道は残っているのでしょうか…今年の動きがカギになるように思います。

 

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