金融庁が、①金融機関が独自リスクで融資契約をしているか否か、報告を求めるという記事です。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59587880W0A520C2EE9000/
合わせて、②地域金融機関への公的資金注入の条件を緩和するという記事もでています。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59587880W0A520C2EE9000/
新型コロナ禍における経済危機を如何にして食い止めるか、事業活動の血流である「お金」の流れを止めないために、金融機関に頑張ってもらいたいということなのでしょう。
2020年3月期の決算では7割近くが前期比減益・赤字となっており、低金利政策と倒産等による不良債権の増加は、更なるダメージを与える可能性が高く、厳しいい経営を余儀なくされているとは事実であり、早い段階で②の対策を示したのでしょう。
しかし、①のテーマに関しては、今更というか、これまでの指導要領は何だったのか…と不思議に思います。
ここ数年、金融庁は「日本型金融排除(2016年に金融庁が示した言葉)」が発生していることが問題であり、改善するために、企業の事業性を正しく評価、併せて、無担保無保証の融資を推進すべきと指導してきたはずです。
その一環として、金融機関に「事業性評価」シートなるものを作成させ融資運営に適用すべきものとし、金融仲介機能のベンチマークにも盛り込み、運用状態を都度報告、開示させていたはずです。
しかし、最近は、金融庁長官が変わったことなのか否か分かりませんが、これまでの取り組みについては重要視されず、デジタルトランスフォーメーション=DXへの対応等、デジタル社会におけるIT対応を重要視する方向にシフトしていた気がします。
100年に1度といわれる、パンデミックによる世界的危機が発生していなければ、新たな、取り組みは重要であったとも思いますが、危機対応という観点からは、「事業性評価による総合的な企業支援」という取組みを継続・強化していれば、改めて指導するものでも無いように思うのは自分だけでしょうか。
お役所も、TOPが交代し、方針が変わることで指導方針を変えることはありますが、本質については、維持継続・改善しながら効果を高めていくことが、必要ではなかったのかと思います。
以前からもそうでしたが、「信用保証協会の保証」があれば融資をするというより、どうすれば信用保証を認めてもらうことができるかという風潮があり、自前でリスクをとる=企業を正しく評価するという取り組みは殆ど重要視されていなかったのが事実です。今回の緊急事態では、特に、その傾向が強く表れており、今の経営者としては、敢て、将来のリスクを取るという判断を下すことはしないのでしょう。
最近でも、メガバンクも含め、資金繰りに困っていても保証協会の保証付きでない案件は採り上げないという話をよく耳にしますので、現在も変わっていないということでしょうか。
2020年5月1日のブログ「金融庁による調査結果の記事ですが…」でも指摘しましたが、こういう時こそ、金融機関が独自の目線で融資債権の内容を見極め、適切に対処できる判断基準と取組方針をいち早く打ち出し、内部留保を効果的に活用しながら2~3年後の経営の姿を考え直し、真の意味で「顧客目線」で経営する必要があるのではないでしょうか。