売掛金の資金調達へ保険でリスク補完する仕組み

2020年06月25日(木)

損保ジャパンが、売掛金を担保に金融機関が資金提供する際のリスクを保険で補完するサービスを提供するそうです。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO60702820T20C20A6EE9000/

記事の中では、銀行は売掛金を資産として評価した融資を積極的に手掛けてこなかったと指摘していますが、実のところどうなのでしょうかね…
商売の資金決済手段として手形が主流であった頃は、「商業手形割引」という融資手法が主流であり、ある意味、売掛金を早期に現金化するものであって、手形振出企業の信用を重視したしたものでした。しかし、企業側の印紙税や事務コスト負担を軽減する目的から手形そのものによる決済の取扱いが減少すると同時に、銀行振込による支払決済が主流になってきた状況で、売掛債権担保融資に関しては債権保全手続きという観点からあまり利用されず、ノンバンクによるファクタリング等の扱いが増えてきているように思います。
また、電子化ということから「でんさい」が紙の手形の代役を担うものですが、あまり利用されていないというのが現状なのでしょう。

今回のスキームは、融資する銀行側からすると貸し倒れとなるリスクを回避でき、且つ、事務負担も軽減されるのでしょうが、リスクを補完する損保、事務を扱う企業と3つの機関が係わることで、利用する企業側のコストは相当高くなるのではないでしょうか。ファクタリング会社が提供する手数料とあまり変わらないようにも思います。
記事の中では、流行りのAI機能を活用してリスク判定し審査期間を短縮することで、利便性を提供するとのことですが、全体でどの位のコスト負担を想定するのかによって普及するか否かが決まるように思いますし、利用を求める企業がどれくらいあるのかも考える必要があるかと思います。

融資する銀行側のビジネスを考えるならば、当局も指導していた「事業性評価」による企業実態の把握をしっかり行い、且つ、決済口座情報や為替取引情報を利活用することができるのであれば、独自でリスクをとる融資モデルを構築することは可能でしょう。つまり、企業側は低コストで、且つ、簡素化された手続きで利用できる仕組みになるはずです。
「電子契約」と「でんさい」の機能を組合わせることで、新たな資金提供手法を考えることもできますが、具体的に検討を進めている金融機関は少ないのが現状だと思います。

これからの時代、利用する顧客側の目線でのビジネスが主流になるでしょうが、リスクをどのようにして負担できるかが”肝”になるように思います。そのためにも、情報の高度利用というテーマは重要な要素になるのではないでしょうか。

 

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