横浜銀行が、人工知能(AI)を活用して経営課題を推計するモデルを開発するとの記事です。
横浜銀行、AIで企業の経営課題を分析 ミライズと開発: 日本経済新聞 (nikkei.com)
企業の財務情報における業績や預金口座の取引履歴など銀行が保有する情報と経済指標などの外部情報を組み合わせることで、企業の経営課題を推定できるモデルを体系化するようです。
これまで、金融機関が推進していた「事業性評価」に基づく課題解決型の営業活動に関しては、一定規模以上の取引先が主体であり、規模が基準に達していない中小小規模企業に関しては具体的な対応ができていなかった点を考えると、収集した情報を多面的に活用できるように人工知能(AI)機能を活用するのは一つの対策といえるでしょう。
これまで人的管理を主体とする対象企業群には入らない取引企業の中から、企業として想定されるニーズをパターン化した上で絞り込むということかと思います。しかし、収集されている財務データも含めた企業情報と決済口座の動向から、どこまでの課題を明らかにすることができるのでしょうかね。
決済口座情報を活用した運転資金需要へ対応する取り組みは既に実施されており、目新しいものにはならないと思いますし、全ての預金取引を一金融機関に集中している企業も少なく、どこまでの情報として捉えるのか、基準を設けたとしても有効な情報と判断できるのか限界がありそうです。
一方で、財務分析を主体とした経営課題を発見する手法に関しても、既に各金融機関が導入している財務分析ツールにより分析レポートとして提供されているケースが多い点を考えると、新たな発見としてパターン化できる要因はあるでしょうかね。
マクロ的な指標も考慮するということですが、昨今の為替相場(円安)や輸入がベースとなる原材料価格の高騰等が、企業業績にどの位影響があるのか等に関しても、業界情報を参照すれば業種等からある程度類推することも可能ではないか思います。
最近、人工知能(AI)の機能を活用するという件の事例は多いのですが、よくあるケースでは、実際にAIツールを用いて導き出した内容を検証すると、これまでの経験値で考えられていな内容と同じであり、目新しいものではないという事も多々あります。
企業の倒産リスクを判定する信用リスクモデルを体系化する場合、色々な手法が提供されており、統計モデルである「判別分析,ロジットモデル,ハザードモデル」や、オプション理論を用いたオプションアプローチモデルである「構造モデル、外生変数モデル」の2つに分類できますが、様々な観点から評価検証されています。
人工知能(AI)機能は、ある意味、これら複数のモデルを組み合わせたハイブリッド型も考えられますが、「何を導き出すのか(目的変数=例えば倒産する可能性)」が重要であり、且つ、どのような情報をどのような手法を用いて体系化するのか明らかにしておくことが肝要ではないでしょうか。