地銀の9月末決算に関する記事ですが…

2023年11月20日(月)

地方銀行の決算が出そろったようですが、取組姿勢にもより増益組と減益組と分かれているようです。

倒産増加の影響は? 地銀4~9月期決算まとめ読み - 日本経済新聞 (nikkei.com)

金利上昇局面に入り、大手銀行収益はプラスに転じていますが、地域金融機関ではマイナスに働くケースも多くなっているようで、企業業績の低迷による不良債権処理費用の負担も影響しているようです。
金利上昇による経営への影響を考えると、以下の通りプラスに働くことは限定的であり、マイナス面の影響が大きいのではないでしょうか。
1.今回の修正による金利上昇は長期金利が中心であり、短期金利に連動する変動金利が中心である住宅ローンや企業向け貸出の金利に大きな影響はない。長期固定金利の住宅ローンや企業向け貸出、社債の金利には影響するものの、今後の新規貸出から段階的に反映されるため、直ぐにプラスに働くことはない
2.地域金融機関は、これまで政策金利や市場金利が横ばいで推移するなかでも、貸出金利を引き下げ、貸出残高を増やす戦略を採用しており、今後、日銀がさらなる政策修正に動いた場合も、すぐさま貸出金利を引き上げられるかは不透明
3.一方で、各種の悪化要因となるストレスの長期化により業績不振に陥る企業が増加、信用コスト面の負担が収益悪化につながる可能性がある
4.更に、地域金融機関は、余資運用において、超長期の円債保有を増増やしており、超長期金利の上昇は、むしろ、保有円債の評価損の増加につながる

やはり、3.の不良債権処理費用に関しては、今後、増加に転じるのは明らかと思われます。
これまでの、政策的な対応を加味すると、本来、市場から退場せざるをいない企業が延命措置(金融円滑化法による貸出条件変更、コロナ禍による助成金などの現金給付、ゼロゼロ融資による金融支援)により存続してきましたが、限界に近付いているのではないでしょうか。

金融機関としては、今後、本格的な事業再生支援に取り組むべき時期になると思われますが、体制面も含め対応できる状況になっていないしょう。不良債権処理費用の算定根拠となる「自己査定」による債権評価基準については、2019年の金融検査マニュアル廃止により見直しをすべきところ、7割近くの金融機関が未着手の状態にある点も懸念材料と思います。
過去の不良債権処理状況を年代別にみると、ここ10年以上低位に推移していますが、今後は上昇に転じ、金融機関経営を圧迫する可能性が極めて高くなるのではないかと思います。

 

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