事業承継対策への適用方法

 日本の中小・小規模企業の6割は後継者が決まっていないと言われますが、経営者が高齢になっていたり、体調がすぐれない状況が続く場合には金融機関としても「事業をどのように承継するのか」確認しなければなりません。特に融資取引がある取引先の場合は、リスク管理の点からも後継者対応を確認しておく必要があります。

 事業承継対策を講ずる場合、日頃の面談時に以下の内容に関して情報を収集、確認しておくことが重要となります。
○経営者の意識…将来の会社の姿、事業計画の有無、モチベーション
○経営者の状況…株式保有状況、個人名義の資産・負債、保証の有無
○後継者の状況 …親族や後継者候補の有無、当該人材の能力、会社への忠誠心
○会社経営資源の状態 …資産内容や資金状態、従業員の状態、技術力等の「のれん」評価
○相続発生時の問題点 …法定相続人の人間関係、株式の保有状況、相続財産の特定、相続税の価額、納税方法の考え方

 基本的には、経営者である社長の事業への取組み姿勢が重要となりますが、会社の持っている経営資源の実情を正しく捉え、将来のあるべき姿を明確にすることが重要となります。

 また、事業承継の方法としては「親族による承継」「従業員や外部経験者の受入」「M&A」「IPO」の4パターンが考えられますが、それぞれの方法でメリットとデメリットがありますし、検討すべきテーマも異なってきますので、現在の経営者がどのように考えているのかチェック項目も含め確認する事が重要です。

  
 また、経営者によっては、一代で事業を止め「廃業」を考える方もいますが、従業員や取引先への影響等を考え、M&A等により事業そのものを引き取ってもらうべく、早目の対策を考えるよう、アドバイスすることも重要となります。

 事業承継の方向性が固まった時点で、具体的な事業承継の計画を策定することとなりますが、以下の手順で事前準備を進める必要がありますので、金融機関としてサポートする内容を具体的に検討しなければなりません。

・事業承継の具体的時期の決定
・会社としての経営理念を再構築し社員や取引先企業に浸透させる
・中長期的な経営計画を策定する=知的資産経営計画により策定した事業計画がベースになる
 
→事業を安定的に継続できるか、企業価値を高める事ができるかコンサルティング機能により積極的に提案する必要があります
・円滑な事業承継を実現するための課題の整理
 →保有する資産や債務に関して具体的な相続対策を考える必要がありますので税金対策も含めた具体的対応方法を提案する必要があります


 また、計画を策定する際には、承継方法毎に検討すべき点(事業承継のメリットデメリット参照)について具体的に実現できるよう進捗管理する事も必要となりますので、現在の経営者および後継予定者と信頼関係を築けるように定期的な訪問を心掛けるようにし常に情報収集、提供するようにすることが重要となります。


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